難問3施設自動化
日常の保守作業の自動化について
日常の管理作業を上げ、この作業の中で自動化の要否、実用性などを考え、表にしてみました。 作 業 項 目 要 否 実 績 自動化の可能性と実用性 - 所 見 浴槽の排水作業 ◎ 有 浴槽湯張り ◎ 有 補給水量の管理 遊離残留塩素濃度の管理 水温調節管理 ろ過装置のろ過材洗浄等再生作業 ヘアーキャッチャーの点検清掃作業 水質観察 浴場清掃作業
日常の保守作業の自動化について
人手により浴槽の共栓を抜くのではなく、浴槽排水配管に電動弁をつけ、遠方にて操作して排水弁を開閉して、作業を省略することができます。
共同浴場や営業浴場においては、共栓をいたずらされる場合があるため、管理上自動化する価値は、あると思います。
排水弁開(浴槽排水)スイッチを入れることにより、自動給水装置を止めるように回路を組むことで、清掃時に操作するスイッチは、このスイッチ一つで、掃除が行える。
タイマー式にして、自動給水装置と併用すれば、水換え作業を自動で計画的に実施することも可能である。
浴槽への湯張りは、清掃終了からの湯張り、入浴でオーバーフローした浴槽水の補給、水面に浮いたゴミを流し出す為の補給などが主だと思います。
お湯張りや水位保持は、電極棒の水位計で簡単に自動制御することができ、昔からあたり前のように使われてきました。
最近は、水位検出配管の水は、停滞して不衛生であると、注目されるようになってきました。この対策として各社は、水頭圧式や超音波又は、光センサーを採用するなど、工夫しているようです。
浴槽の水面に浮いたゴミを流し出すためには、タイマーで、定時間強制的にオーバーフローさせることにより、ごみを取り除くことができます。 この程度の自動化は、簡単にできますが、ゴミが無くても、時間がくれば補給されてしまう為、不経済とも言えます。しかし露天風呂などは、屋外から舞い込む、枯れ葉などのゴミが多い時期もあるため、採用すると便利かもしれません。
完全自動にする為には、浴槽水面をカメラで常時監視しコンピュターで、浮遊ゴミの密度を認識しながら、補給制御をするなんて最近の制御技術ならできそうですね。一般浴槽で、そこままで駆使する必要が有るかは、わかりませんが。
◎
有
補給水は、浴槽の浮遊物をオーバーフローさせるばかりではなく、入浴で持ち込まれる人体からの代謝物(汗、尿)を希釈することが目的でもあります。
もちろん補給水ばかりに頼らず、薬剤や紫外線照射装置又は、オゾン装置などを使い溶解物質を分解除去し、補給水を軽減することはできてますが、まったくゼロにすることは、できません。
通常は、日常の管理担当者が、常時水質を観察し補給水量の調節や換水を、経験で判断して行うことが必要ですが、この作業は、経験が必要になる為、誰でも行える作業ではありません。
したがって、大半の施設は、水位計の位置を高めに設定し少人数の入浴でも補給されるようにしたり、少量の補給水を常時掛け流したり、換水日を決め、水の汚れの程度にかかわらず換水するなど、マニュアル化して水質を保っています。衛生面を優先した確実な方法ではありますが、当然過剰な水と燃料が必要になる為、経済的とはいえません。
では、自動で希釈水量の調節をする場合を考えてみますと、常時自動で水質を測定し、このデーターから調節器を使って、自動弁を制御し補給水を加減調節することになります。衛生面と経済面共に、最適な方法と思いますが、この様なシステムは、上水場や下水処理場などに有る高価な計器やシステムが、必要となり、小規模施設においては、見たこともありませんし、採算面においても、今後開発が進み普及するまでは、現実的ではないと思います。
また水質の管理において、作業の自動化は良いが、すべて機械任せでは無く、専任者をあてる必要があると思います。
その他の補給水の目的として、高温の温泉が常時供給される温泉施設では、温泉の供給量調節により浴槽水の温度調節をする場合があります。
これは、温度調節計と自動弁で簡単に制御することができ、コストも小規模施設で採用できるレベルであると思います。
(遊離残留塩素濃度の測定と塩素剤の添加作業)
遊離残留塩素濃度の測定は、DPD試薬による比色法や吸光光度法による測定器が、ほとんどの施設で採用されています。
最近は、設置式のポーラログラフ法による高価な計器が普及し始め、測定から表示、記録までの一連の作業を自動化している施設も多くなっています。又測定データーより塩素剤の添加量の調節も自動化できるため、非常に便利な装置です。
遊離残留塩素濃度は、指針で、常時残留するように指導れていることから、入浴条件により変化する塩素消費量に対応する為に一日に何回も測定しなければならず、大変な作業です。多少コストがかかっても自動化したい部分です。
塩素剤の管理を自動化することにより利点も多いのですが、欠点も出てきます。普通のポーラログラフ法は、遊離残留塩素濃度を主に測定する為、入浴者が多く大量の代謝物質を持ち込む場合、塩素が充分有っても、遊離し難く、塩素剤を過剰に添加してしまいます。この結果、クロラミンなどの結合塩素や、トリハロメタンなどの毒性物質を大量に作ってしまうことが多々あるため、注意が必要です。
塩素剤は、液体と固形の錠剤と顆粒のものがあり、良い面も悪い面も其々持ちあわせています。滅菌装置への薬剤の補充作業において、次亜塩素酸ナトリウムは、濃度が薄い(12%)ことから、量が多くて重く大変ですが、固形や顆粒剤は、高濃度(60%〜90%)であるため、量が少なく液体と比べると楽に補充を行うことができます。
しかし、添加作業を自動化する場合、液体は、添加量の調節が容易にできますが、錠剤や顆粒剤は、添加量の調節や機械による移送が自動化し難く、装置のイニシャルコストが高くなります。また高濃度であることから、浴場施設においては、計量精度が必要となり時間的に、塩素濃度にむらが発生します。したがって、水泳プールの様な大規模施設の自動化には、高濃度の顆粒剤塩素剤等が適し、小規模施設(浴場)の自動化には、次亜塩素酸ナトリウムが適当だと思います。
水温調節の自動化は、循環式の浴場施設においては、従来からあたりまえのような設備です。
装置は、従来空調などに採用されている、比例制御方式が主流でしたが、イニシャルコストが高いことや、装置が複雑で保守性や修理性が悪いことから、現在は、電動ボール弁などによる2位置制御が主流となっています。最近の温度調節器は、非常に改善され、2位置制御でも温度むらが少なく修理性が良く、コストも安いことが、替わった要因だと思いますし、2位置制御で充分だと私も思います。
浴槽水の自動温度調節は、必要性の順位からすると一番重要なものであり、これ無しでは、成り立ちません。
浴槽水は、時間と共に放熱して水温は下がるので、昇温制御を行うことが、一般的です。普通は、ボイラーや電気昇温器などの熱源を使い、熱交換器で昇温します。又、高温の温泉が供給される温泉施設の場合では、浴槽水温により温泉の掛け流し量を制御し、浴槽水温を維持する方法もあります。
逆に清掃後の湯張り時は、浴槽水温が高温になりがちで、従来は、湯かげんを診ながら手動で加水量を調節しましたが、作業が大変ですので、降温制御で加水し、満水時に調度42℃になるように、自動で加水することもあります。
いずれも、温度調節器に頼り制御するわけですが、なかなか熱かったり、ぬるかったりでうまくいかない場合が有るようです。
原因の多くは、浴槽水温をうまく測れていない場合がほとんどです。測定位置や循環量不足で浴槽水が停滞し浴槽の平均水温が測れていない場合が大概です。
浴場施設での一般的濾過装置のフィルターにはいくつかの種類が有り、砂濾過方式、カートリッジ式、珪藻土濾過などが主流かと思います。
浴場用濾過装置のフィルターは、常に清潔に保つことが重要であり、清潔に保つことにより、結合塩素などができ難く、塩素剤の効果をより発揮することができます。よってなるべくろ過材の逆洗や洗浄作業を多く行うことが重要であり、最近は、自動逆洗方式が多く採用されるようになっています。
入浴時間中は、逆洗を実施することができない為、通常は、清掃時間帯又は、定時間外作業時に実施することになります。自動で行うことにより、夜中にでも計画的に無人で実施でき、人件費も、当然削減できます。又、入浴人数が多くなる休日に合わせ、計画的に逆洗を行うことにより、補給水が増し、水質の改善にもつながり、一石二鳥です。
カートリッジ式のろ過装置は、もともと日常又は定期保守作業で、ろ過材の取替作業を行うことを前提とし、逆洗機能を省き、イニシャルコストを安くすることを目的とした装置であるため、自動化の対象ではないと考えます。
カーチリッジフィルター式は、ろ過材の取替や洗浄作業が手作業で大変なため、取替頻度が少なくなり、濾過物質量の増加に比例して、浴槽水の(有機物質)過マンガン酸カリウム消費量も高くなります。この結果、結合塩素が増して塩素臭がきつかったり、塩素滅菌の効果が半減したり、換水をしても、水質の改善が出来ないなどの重大な欠点が生じてきます。現在カーチリッジフィルター式を使用している施設や、これから採用する施設の管理者は、以上のの欠点を理解し欠点を補う使い方が必要です。
ヘアーキャッチャーの点検作業は、誰にでも出来る作業では無く、施設の運転条件を理解していないと、難しい作業です。
作業頻度も多く、指針では、毎日実施するよう、うたわれています。出来れば、自動化したいと思われるでしょうが、上水施設や工業用水処理では自動逆洗式ストレーナーとして存在しますが、浴場施設では、見たことはありません。仮に、自動化したとしても、濾過装置より高価なものとなるでしょうし、浴場施設では、営業時間中、ポンプを止めることもでき、懸けたお金に値するメリットを得ることは、できないと思います。
ヘアーキャッチャーは、浴槽水の循環回路の中で一番塩素濃度が低く、生物膜が発生しやすい環境です。したがって、点検清掃作業を自動にせず、手で作業するとことにより、内部の生物膜のぬめりが確認でき、水質を知ることができる為、水質管理を含め、是非手作業で実施してもらいたい作業です。
水質の観察をあえて日常の作業として上げた理由は、装置の自動化により、関心が薄れ、放りっぱなしになるからです。機械は、故障するものであり、機械任せで、監視をおこたっては、良い結果は、得られません。自動化すればしたなりに今度は、機械の保守や調整作業が発生してくるものです。
水質の観察を毎日行うことで、機械の不調を早期に発見したり、重大なトラブルも未然に防止することができるので、毎日浴室や機械室へ行き、水質の観察をしてほしいものです。